街が夏の気配を濃くしていた7月15日の夜。万世橋区民会館とオンラインをつないで、秋葉原トーストマスターズクラブの第433回通常例会が始まりました。年に一度の役員就任式を迎えた会場には、会員10名とゲスト5名。いつもより少し華やいだ空気のなか、言葉を交わし、耳を傾け、互いの一歩を大きな拍手でたたえる時間が流れました。
01 — OPENING30秒の会話が、
場の温度を変えていく
この夜の幕開けは、初めての試みとなる「ペアトーク」でした。隣り合った人とペアになり、「今日の朝ごはんは何を食べましたか?」というお題について、一人30秒ずつ話します。
テーマはごく身近。それでも、朝食の話から思いがけないエピソードがこぼれ、あちこちで笑い声が起きました。初参加のゲストの表情も、会話を重ねるうちに自然とほぐれていきます。人前で話す練習は、話しやすい空気を皆でつくるところから始まる——そんなクラブらしさが、短いウォームアップに凝縮されていました。
続く開会の挨拶では、年々厳しさを増す夏の暑さに触れながら、「自分は大丈夫だと思っている範囲と、実際に起きていることの間には、ずれが生まれることがある」と注意喚起。体調への気づきであると同時に、自分の思い込みを見つめ直す言葉としても心に残りました。
花火、星空、山、海。夏の景色が鮮やかさを増す季節に選ばれた今夜の言葉。新しい一年を迎えるこの日の空気にも、ぴたりと重なりました。
02 — PREPARED SPEECHES縄文からAIへ。
カードからアニメへ。
準備スピーチは3本。扱うテーマは驚くほど異なりますが、どのスピーチにも「自分が本当に伝えたいこと」を、聞き手の手元まで届けようとする工夫がありました。
身体知・暗黙知・形式知
縄文時代の知恵の伝承から、文字と印刷、そしてAIが形式知を扱う現代までを一気にたどる壮大なスピーチ。合気道で「力を抜く」感覚を身につけた経験を手がかりに、最後は「人は自分の身体知を通してしか学べないのではないか」という問いへ着地しました。
お得なクレジットカード
旅でマイルや宿泊特典を狙うのか、日々の買い物で還元を重視するのか。年間決済額によっても最適解が変わるという実践的な視点を、スライドと軽快な語りで紹介。聴衆の「知りたい」を正確につかんだプレゼンテーションでした。
第5回アニメ例会、テーマは「陰」
過去4回のテーマを陰陽思想の「陽」になぞらえ、次回は「陰」を掲げると宣言。自分と同じ痛みを知るキャラクターに思いを託せば、弱さや失敗を語るハードルは下げられる。「心を打たれる陰キャはたくさんいる」という言葉に、アニメ愛とスピーチ論が交差しました。
人はどう学ぶのか。
03 — TABLE TOPICS二択だからこそ、
その人らしさが見えてくる
即興スピーチ「テーブルトピックス」の問いは、あえて二択に限定されました。選択肢がシンプルになるほど、答えの理由や語り手の経験がくっきりと浮かび上がります。
- 夏 or 冬
- そうめん or 冷やし中華
- 山 or 海
- 宿題は早め or ギリギリ
- インドア or アウトドア
季節の歌を口ずさみながら答える人もいれば、海辺で育ったからこそ「山の空気のおいしさが分かる」と語るゲストも。「家にいるとかえって熱中症になりそうなので、結果的にアウトドア派です」という回答には、会場から共感の笑いが広がりました。
04 — EVALUATION成長を見つけ、
言葉にして手渡す
トーストマスターズの例会で、スピーチと同じくらい大切にされているのが「論評」です。良かった点を具体的に伝え、次の一歩につながる改善のヒントを添える。この夜の論評で印象的だったのは、どの話し手にも「前回からの変化」が見つけられていたことでした。
ビジュアルが分かりやすくなった。前回のフィードバックが反映されていた。そんな変化を見つけてもらえる場所は、大人になるとなかなかありません。また、ゲストが「えーとカウンター」と「文法係」を快く引き受けてくださったことも、うれしい出来事でした。
「『〜になります』は『〜です』のほうが聞きやすい」。文法係からの端的な指摘に、自分の口癖を振り返った人も多かったはずです。話し手だけでなく、聞き手も参加する。互いに学びをつくる時間こそ、このクラブの心臓部です。
05 — INSTALLATION CEREMONYガベルは、
次の船頭へ
例会の締めくくりは役員就任式。1年間クラブを支えた旧役員へ労いが送られ、新役員が一人ずつ「職務に最善を尽くすこと」を宣誓しました。
最後は会員全員が立ち上がり、「はい、誓います」と声をそろえます。前会長から新会長へガベルが手渡された瞬間、会場を包んだのは、役目を引き受ける人への敬意と、次の一年への期待でした。
06 — PRESIDENT'S MESSAGE話す力より、
聞く力
「本当に鍛えられるのは、聞くことです」
入会12年の新会長が就任挨拶で語ったのは、話し方の技術だけではありませんでした。
倍速視聴が当たり前になった時代に、2時間かけて人の話をじっくり聞く場所が、どれほど貴重か。話し方の本を何冊読んでも上達を実感できなかったのに、仲間のスピーチを聞き続けるうち、自分の話し方が自然と変わっていった——実体験に裏打ちされた言葉には、静かな説得力がありました。
挨拶の結びは、ゲストへの呼びかけでした。「できれば、あなたの話もここで聞きたいです」。話すことを急かすのではなく、まず相手の声を受け止めたい。その一言に、新しい一年のクラブの姿勢が表れているようでした。
「このクラブは、拍手がとても大きい。それは、みんなが仲間のスピーチをちゃんと聞いている証拠です」— ゲストから寄せられた言葉
新会長が語った「聞く力」と、期せずして重なる感想でした。大きな拍手は、ただ場を盛り上げるための音ではありません。あなたの言葉を受け取りました——そのことを伝える、もう一つのフィードバックなのです。
07 — FINALE華やかな夜の、
その先へ
華やかな言葉と、大きな拍手と、新しい体制。第433回通常例会は、次の一年への期待を存分に感じさせる夜になりました。
まずは「聞く」ことから、
始めてみませんか。
秋葉原トーストマスターズクラブでは、見学ゲストをいつでも歓迎しています。人前で話すことが苦手な方も、最初は聞くだけで大丈夫。次の例会でお会いできるのを楽しみにしています。